◆著者について
ジェレミー・シーゲルは米ペンシルバニア大学ウォートン校の教授で、長年にわたり株式市場のパフォーマンスを分析してきた“ウォール街の賢人”です。本書『株式投資の未来』では、「過去200年にわたる膨大なデータ分析」を通して、“どんな株式が将来最も利益をもたらすのか”という問いに答えています。
◆本書の主張:未来を制するのは「退屈な企業」
本書の中心にあるメッセージは明快です。
「人気の成長株ではなく、配当を地道に出す成熟企業が長期的に高リターンを生む」
たとえば、過去のデータでは、IBMやインテルといった華々しいテック銘柄よりも、たばこ会社のアルトリア(旧フィリップ・モリス)のほうが、長期的には圧倒的に高いパフォーマンスを記録しています。これには以下の理由があります。
◆なぜ地味な企業が強いのか?
- 高配当+再投資効果
企業が配当を出すと、それを再投資できるため、複利効果が働きます。成長株は配当を出さない傾向があり、この恩恵を得にくい。 - 過小評価されやすい
市場は派手な話題や期待に流されがち。一方、地味な企業は過小評価されやすく、実力以上に安く買えるチャンスがある。 - バブルに巻き込まれにくい
人気株はバブルに巻き込まれやすく、割高で買わされるリスクが高い。地味株はその点で安定性が高い。
◆「過去の成長=将来の成長」ではない
シーゲルは、過去の利益成長率が高かった企業が、将来も高成長を続けられるとは限らないと警告します。むしろ、過去に急成長した企業の多くは、市場で高評価されすぎており、今後はリターンが落ちる傾向にあるのです。
◆感想:投資に必要なのは「人気」ではなく「本質」
本書を読むと、いかに私たちが短期の人気や話題性に影響されて投資判断をしているかを痛感します。特にSNSやニュースで話題になる銘柄ばかりを追いかけてしまう人にとっては、冷静な目を取り戻す絶好の一冊です。
配当を重視し、安定した企業を地道に持ち続けるという「地味な戦略」こそが、長期的には最も堅実かつ高いリターンをもたらす──これは、目先の情報に踊らされがちな現代の私たちにこそ響く真理です。